新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、日本への入国制限も強化されています。
外国にいる日本人が帰国した場合においても、政府が指定した施設で2週間の待機が必須となっていますが、その際にホテルが海外からの帰国者に対して「宿泊拒否」という対応をしていることが問題になっています。
海外からの日本人帰国者は家にも帰れない?
日本人帰国者は家に帰ろうにも、公共交通機関の利用を控えるように要請されているため、自宅が空港から遠い場合は徒歩で帰るか、レンタカーを借りる、知人に迎えに来てもらうなどの対応を取るしかありません。
ホテルが帰国者を宿泊拒否すると「旅館業法」で違法になる?
そもそも、今回の新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、ホテルや旅館は海外からの帰国者を宿泊拒否することは法的に可能なのでしょうか?
鳥取県のホームページにこの件について詳細が記載されていましたので、下記に転載します。
新型コロナウイルス感染症に関する宿泊拒否の制限について登録日:
政府の新型コロナウイルス感染症の水際対策強化により、欧州諸国等からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所での14日間の待機及び国内における公共交通機関の使用自粛が求められていますが、旅館業では検疫強化対象国に滞在していたことのみを理由として宿泊を拒むことはできません。
旅館業営業者の皆様につきましては、適切にご対応くださいますようお願いします。
【検疫強化対象国(令和2年3月25日時点)】
アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、アイルランド、アンドラ、イラン、英国、エジプト、キプロス、クロアチア、サンマリノ、バチカン、ブルガリア、モナコ、ルーマニア、中華人民共和国、大韓民国、アメリカ合衆国※参考(法令抜粋)
※参考(法令抜粋)旅館業法(昭和23年法律第138号)
第五条 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二 宿泊しようとする者がとばく❜❜❜、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三 宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。
○鳥取市旅館業法施行条例(平成29年鳥取市条例第79号)
(宿泊者を拒むことができる事由)
第8条 営業者は、法第5条第3号の規定により、宿泊しようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合は、その宿泊を拒むことができる。
(1) 泥酔者その他暴行のおそれがある者で、他の宿泊者に著しく迷惑を及ぼすおそれがあると認められるとき。
(2) 身体被服等が不潔で、他の宿泊者に著しく迷惑を及ぼすおそれがあると認められるとき。
(3) 営業者から請求があったにもかかわらず、宿泊者名簿に記載すべき事項を告げなかったとき。出典:鳥取県HP
この旅館業法を見ると、検疫強化対象国に滞在していたことのみを理由として宿泊を拒むことはできないため、ホテルや旅館施設の運営者は適切な判断が求められるでしょう。
まとめ
日本政府は帰国難民が続出していることに対し、空港近くに待機場所を準備し、その待機場所の情報の提供や、各帰国者の相談も随時受ける体制を整えると説明しています。
ホテルや旅館などの運営者は、帰国者に対しての「宿泊拒否」の判断をする場合は旅館業法を理解した上で検討すべきでしょう。
新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために政府の対策は非常に重要な局面に来ていますが、色んな立場の人がいる中、誰しもが納得できる政策を打ち出すのは困難でしょう。
今は、どんな決定をしても批判される場合が多いのは確かですが、国民や事業者などそれぞれの立場を把握し、慎重かつ迅速に対応策を実施してもらうことを期待します。